悲劇な恋と70年代。距離感が可笑しさを加速する
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ストーリーは、まだ少年のバーナバス・コリンズが登場するところからゴシック調な雰囲気で始まる。バーナバスを見つめる一人の少女がいる。彼女の傍らの女性は、身分が違うのだから、見るのはやめなさいと諭す。少女がバーナバスに耐え難いほど恋をしてしまったのなら、悲劇のスタートだ。
成長した彼は、彼女の心を知ってか知らずか、もて遊ぶ。彼には身分がつりあった婚約者もいるから、彼の心が彼女のものになることは決してない。だから彼女は彼の人生を破壊することにする。
男性は身勝手。女性の恨みは怖ろしい。紋切り型だが心当たりがある人も多いことだろう。だがティム・バートン監督は、登場人物一人ひとりの内面からは微妙な距離をとって描いているので、観客は登場人物に感情移入させられるなんてことはない。
それがコメディ的人物の描き方なんだろうなあ。登場人物はみんなクールだし、やりたい放題だ。それは時代の描き方にも現れている。1970年代もわざと距離をとってシニカルに描いているから可笑しい。
距離をとって見ると人間もとても可笑しいし、だからこそ愛すべきものに思える。それがこの映画の着地点なわけだが、ほとんどの人が納得できるところだと思う。
だが、人物描写以上の力を込めて描かれている70年代に関しては、残念ながら実際にその時代の空気感を知っている人と知らない若い世代では感じ方が少し違う気がする。知っている世代は、あの時代のバカバカしさと愛らしさと懐かしさに胸が温かくなるだろう。
知らない世代は、ふ~んで済んでしまう恐れがある。そういう意味では、バートン監督自身の70年代への愛着は、クールなレベルに収まらなかったようだ。
(オライカート昌子)
ダーク・シャドウ
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